「みんなの銀行はあまりうまくいっていないのではないか」
こうした評価を目にすることがあります。確かに、25年3月期には4期連続赤字となっており、短期的な業績や利用者数を見る限り、成功例として語られる段階にはまだ至っていないように見えます。
しかし、この取り組みを通常の銀行と同じ物差しで測ること自体が、少し違うのではないかと感じています。
みんなの銀行は、日本初のデジタル専業銀行として、明確に若年層を主なターゲットにしてスタートしました。ただ、ここにはいくつかの誤算もあったように思えます。
まず大きかったのは、
「若者はデジタルなら銀行を選ぶ」という仮説です。
確かにUIやUXは重要ですが、実際の銀行選択では、給与振込、住宅ローン、勤務先指定など、本人の意思では変えにくい要因が多くあります。
アプリが使いやすいだけでは、メインバンクにはなりにくいという現実が、想定以上に重かったのではないでしょうか。
次に、若年層の経済力の低さです。若者は預金残高も小さく、融資ニーズも限定的です。超長期で見れば優良顧客になり得ますが、短中期ではどうしても赤字が先行します。この時間軸の長さは、当初想定していた以上だった可能性があります。
さらに、既存銀行のデジタル化が想像以上に進んだ点も誤算だったと思います。今ではoliveなど存在感が増している銀行アプリがあります。数年前までは「デジタル専業」というだけで差別化できましたが、現在では多くの銀行アプリが一定水準以上の使い勝手を備えています。先行者であるがゆえに、差別化の賞味期限が短くなった面は否定できません。こうした誤算が重なり、短期的な成果は見えにくくなっています。
ただ、それでもみんなの銀行の価値が失われたとは私は思いません。むしろ重要なのは、やってみなければ分からなかった現実を、実データとして手に入れたことです。
若者は何に反応し、何には反応しないのか。どこまでデジタルで完結できて、どこからが銀行業の壁なのか。これらは机上の議論では決して得られません。
みんなの銀行は、儲かる銀行を作る試みというより、次の銀行像を探るための実験装置と考える方がしっくりきます。成功も失敗も含めて、銀行業界にとっては貴重な先行事例です。
結果がどうなるかは、まだ分かりません。ただ、「何もしなかった銀行」よりも、「先に失敗した銀行」の方が、次の一手について語る言葉を持てるのは確かです。結果の成否に関わらず、九州地銀勢の中でもその存在感は増してくるのではないでしょうか。みんなの銀行は、そうした役割を引き受けた存在なのだと思います。ぜひ頑張ってもらいたいですね。









