アノマリーとは、「経験則をもとにした、株価が変動しやすいイベントや時期をまとめたもの」を言います。一見、無秩序に動いているように見える株価も実は規則性や周期性がある(かもしれない)という話です。株式投資をするうえでは抑えておきたい知識です。
私はテクニカルな分析はあまり得意ではないのですが、財務的な面からよく言われる代表的なアノマリーをいくつかご紹介します。証券アナリスト試験でもファーマ・フレンチモデルの中で取り上げられるため、覚えておいて損はありません。
1.割安株効果
割安な株式ほど収益率が高くなるアノマリー。株式投資とは「安い時に買って、高い時に売るもの」と言われています。割安で放置されている株価が是正されていく過程で利益が出るため、収益率が高くなりやすいというわけです。バリュー投資の有効性を裏付けるアノマリーであり、これは長らく解消されていません。
2.小型株効果
時価総額が小さい株の方が、大きい株よりパフォーマンスが良い、というアノマリー。下の図は、米国のマーケットですが、「Small Value」の方が「Large Value」より一貫して高いパフォーマンスを保っています。数%の差であっても長期で運用する場合、複利によりパフォーマンスに何倍もの差が生まれます。私の運用方針でも概ね「時価総額300億円以下」を基準としており、この方針は小型株効果を意識したものです。
3.モメンタム効果
値上がりした銘柄がさらに上昇したり、値下がりした銘柄がさらに下落するなど、相場が一方向に進みやすい現象。これは、日本のマーケットにはあまり現れておらず、モメンタムが効きにくい国と言われています。長期間にわたり上昇を続けている諸外国のマーケットでは高いパフォーマンスを示しているようです。
4.1月効果
米国のマーケットに昔から伝わる「1月は他の月と比べて株価が上がりやすい」というアノマリー。理由は、「12月に節税のための損失確定売りが発生して、翌月に買いなおすから」「マーケット関係者が休暇に入る前に手じまい売りをするから」など様々な理由が挙げられています。最近の検証では、この効果は薄れつつあることが指摘されています。
5.(おまけ)ジブリの法則
金曜ロードショーでジブリが放送されると、翌週の月曜日の株価が下がる、という法則。「そんなバカな!」と思いますが、おそらく金曜の夜にアメリカの雇用統計など相場を左右する指標が公表されることが多いのが原因と考えられます。
6.まとめ
ジブリの法則のように関連性が明らかに無いものであっても、「ジブリが放送されると月曜は下げる」と市場参加者全員が信じることで実際に株が売られるようになります。一見バカバカしいように見えますが、これが株式市場です。反対に、1月効果のように皆が知ることになったアノマリーは徐々に消滅して行くというものもあります。
当然皆儲けたいので、1月に株が上がるなら先回りして買ってしまおうとなるんですね。なので、いかにアノマリーを他の人より早く見つけるかというのが大事になってくるわけですが、それはなかなかマメな作業を伴います。
四季報を通読してみると、企業ごとに株価に規則性があるように見えることがあります。きちんと企業ごとに分析して、上昇や下落の確率まで弾き出せば勝率アップに繋げることは現実的に可能だと個人的に思ってます。
四季報から個々の企業の株価のクセを探るのは、楽では無いでしょうが、投資の世界は「怠惰を求めて勤勉に行き着く」もの。この勤勉さを無くさずに頑張って行きたいと思います。皆さんもぜひ株式市場のアノマリーを探してみてください。