2025年12月、ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハサウェイの会長を退任した。95歳。60年以上にわたって市場と向き合い続けた男が、株主への最後のメッセージで語ったのは、意外にも投資の話ではなかった。
最後に伝えたかったこと
バフェット氏は手紙の末尾で、こう書いている。人生の後半の方が前半よりずっと気分よく生きられている、と。そして続ける——過去の失敗をいつまでも悔やむな、学んで前へ進め。良くなるのに遅すぎることはない、と。
さらに、ノーベル賞で知られるアルフレッド・ノーベルのエピソードを引く。ノーベルは兄の死の際、新聞社の手違いで自分の死亡記事が誤掲載されるという出来事に遭遇した。そこに書かれた内容に衝撃を受け、生き方を改めることを決意したという。
バフェット氏のメッセージはシンプルだ。「新聞社の間違いを待つ必要はない。自分の死亡記事に何と書いてほしいかを決め、その内容にふさわしい人生を生きよ」と。
そして「偉大さとは、巨額の富でも名声でも権力でもない。たった一人でも誰かの助けになれば、あなたは世界を助けたことになる。親切はコストゼロだが、計り知れない価値がある」と締めくくった。
投資家として読むと見えてくるもの
私はこの手紙を読んで、バフェット氏が60年かけて積み上げてきたものの正体が少し分かった気がした。
彼の投資哲学の核心は「長期・集中・理解できる企業に投資する」だが、それを支えていたのは結局、人間への深い関心と信頼だったのではないか。チャーリー・マンガーとの64年の友情、オマハの医師たちへの感謝、清掃係も会長も同じ一人の人間だという言葉——数字の話は一切出てこない。
毎年の投資目標を追う中でこの手紙に触れると、数字の積み上げと同じくらい、いやそれ以上に「人間としての振る舞い」を磨くことが重要だと再確認させられる。
自分の「死亡記事」に誇れる一行を、今日も書き加えられているか。仕事でも、投資でも、家族との時間でも——そう問い直すきっかけを、この手紙はくれた。



