元手200円から始めた学生起業|スマホケース販売で学んだ商売の本質

大学3年の冬、コインランドリーで200円を拾った。

財布に入れて終わり——そうしなかったのは、なぜだったのか。自分でもよくわからない。ただ、手のひらの上の硬貨を見つめながら、ふと思った。

「これを、増やせないだろうか。」

貧乏学生だったわけではない。バイトもしていたし、生活に困っていたわけでもなかった。でも、その瞬間だけは、200円がひどく大きなものに見えた。使い捨てにするには、もったいない気がした。


最初の一手

最初のアイデアはすぐには出なかった。数日間、ぼんやりと考え続けた。転売? せどり? 当時はそんな言葉も知らなかった。ただ、「安く買って高く売る」という原始的な発想だけが頭にあった。

答えが見つかったのは、近所の家電量販店だった。在庫処分のコーナーに並んでいた、150円のスマホケース。それを買い、フリマアプリに出品した。売れた。1,000円で。

たった850円の利益。でも、その瞬間の感覚は今でも忘れられない。

「あ、商売ってこういうことか。」

教科書で読んだことでも、誰かに教わったことでもない。体で理解した瞬間だった。


自分に課したルール

自分に課したルールがあった。「追加投資は絶対にしない」——200円を起点に、そこから生まれた利益だけで回し続ける、という縛りだ。

傍から見れば奇妙なこだわりかもしれない。でも今振り返ると、このルールは非常に大きな意味を持っていた。失っても痛くない金額だからこそ、怖がらずに動けた。そして、追加投資という逃げ道がないからこそ、一円一円を真剣に考えた。

「元手が少ないから何もできない」は、言い訳だと思い知った。


試行錯誤の日々

最初に仕入れたのはスマホケースではなく、フィルムやタッチペンだった。1個10円で仕入れ、300円で売る。回転が速く、リスクも小さい。でも、慣れてくると物足りなくなってきた。

ケースにシフトしたのは、ある失敗がきっかけだった。フィルムを30枚仕入れたとき、機種のラインナップを読み間違えて半分以上が売れ残った。損はしなかったが、利益はほぼゼロ。「なんとなく売れそう」で動くと、こうなる。そう痛感した。

その反省から、売れ筋を徹底的に調べるようになった。どの機種が伸びているか、どの価格帯に需要があるか。データというほど大げさなものではないが、売上の傾向を手帳にメモし続けた。

そうして辿り着いたのが、300円仕入れ・1,200〜1,500円販売のスマホケースだった。

ここでも発見があった。派手なデザインは、動かない。 シンプルで、少しだけ個性のあるものが、静かに、確実に売れ続ける。そして——iPhoneよりも、GalaxyやXperiaのケースの方が売れた。

最初は不思議だった。iPhoneの方がユーザーが多いはずなのに。でも考えてみれば、当然だった。iPhoneのケースは店頭に溢れている。わざわざネットで探す必要がない。一方でAndroidユーザーは、リアルでもWebでも選択肢が少ない——だから、ネットに来る。

「需要と供給」とはよく言うが、大事なのは数字ではなく、人の行動を見ることだと気づいた。


学びが、別の場所で生きていた

この経験は、後に投資や企業分析をするうえで、思いがけず役に立った。

財務諸表を読む前に、まず考えるようになった。

「この会社は、何を、誰に、どうやって売っているのか。」

スマホケースを売っていた頃の思考回路と、本質的には何も変わっていない。売れるものと売れないものを観察し、仮説を立て、試して、改善する——企業分析も、突き詰めればこの繰り返しだ。

むしろ、華やかな理論より先に「商売の現場」を体験していたことが、自分の判断に地に足をつけさせてくれたように思う。

利益は偶然では生まれない。仮説と検証の先にしかない。そしてビジネスの核心は、難解な理論の中にではなく、人が何を求めているかを観察することの中にある。

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