きっかけは仕事だった。自治体の歯科衛生担当者から「住民への歯科検診を本格的に推進したい」という話を聞いたのが、この銘柄を調べ始めるきっかけになった。シンクタンクで自治体業務に関わる立場として、これが「現場の本音」だと感じた。そこからHiクラテス(4172)に辿り着いた。
国策という名の追い風
2022年6月に閣議決定された「骨太の方針」に初めて明記された「国民皆歯科健診」は、すべての国民が生涯にわたり定期的に歯科健診を受けられる制度を目指すものだ。現在、高校卒業後は歯科健診を受ける機会が大きく減り、自治体による歯周病健診も40・50・60・70歳の節目のみにとどまっている。
この空白を埋める制度が動き出せば、全国約7万件の歯科医院でシステム刷新の需要が一気に高まる。マイナ保険証連動や電子カルテ義務化の流れも重なり、歯科DX市場は構造的な拡大局面にある。
Hiクラテスの数字と強み
直近の第1四半期決算では売上高6.32億円(前年同期比3.4%増)、経常利益2.06億円(同2.3%増)と増収増益で過去最高益を達成。自己資本比率は88.9%と財務は極めて健全だ。
競合との差別化は2点ある。一つは全国24拠点による対面サポート体制。デジタルに不慣れな歯科医師にとって、「顔の見える担当者がいる」という安心感は最強のスイッチングコストになる。もう一つは日立と共同開発したAI音声入力機能だ。歯科衛生士不足が深刻な地方の診療所では、「一人で検査と入力が完結する」という実利は単なる便利ツール以上の価値を持つ。
直視すべきリスク
ただし、死角もある。クラウド型で予約から決済まで一括提供するメドレーなど、UI/UXで勝る競合との競争は今後激化する可能性がある。また、24拠点の直販体制は強みと同時に固定費の重さでもある。採用難が続く中では、スケールしにくい構造だ。音声認識技術のコモディティ化も長期的なリスクとして念頭に置く必要がある。
投資判断
現在のPBRは1.25倍、EPSは202円(会社予想)。小型成長株としては過熱感はなく、国策の追い風が続く間はモメンタムが維持されやすい。
今回は打診買いだ。AI音声入力が労働集約的なビジネスモデルを高利益率なテックモデルへ変えられるかどうか——そこが買い増しを判断する分岐点になると見ている。









