【コミュニケーション戦略】若手と接する際の「三原則」

年を重ね、自分よりも若い世代と接する機会が増えるにつれ、その接し方の難しさを痛感することが多くなります。特にシンクタンクでの仕事や投資家としての視点を持つ身としては、ついつい効率的な「正解」を提示したくなる誘惑に駆られますが、心地よい人間関係を築くためには、あえて「話さない勇気」を持つことが求められます。

私が大切にしたいと考えているのは、以下の「三原則」です。

1. 飲んでいる時に「説教」しない

これが最も重要です。説教は、矢印が明確に相手に向いており、相手の考えや現状を否定する行為になりかねません。どんなに良いアドバイスのつもりでも、相手にとっては領域を侵害されたと感じるものです。最近では、「最悪、説教さえしなければ合格点」と考えるようにしています。それだけで、相手にとっての心理的安全性は劇的に高まるからです。

2. 「昔話」をしない

年長者にとって、昔話は「自分が何者であるか」を証明するためのアイデンティティの一部ですが、若手にとっては現在の文脈と切り離された「過去のデータ」に過ぎません。過去の成功体験に固執せず、今の時代を生きる彼らの視点に寄り添うことが大切です。

3. 「自慢話」をしない

実績や苦労話は、つい語りたくなるものですが、それは生存バイアスがかかった偏った情報になりがちです。自慢話は相手の時間を奪うだけでなく、対等なコミュニケーションを阻害してしまいます。

「話すことがない」という壁をどう乗り越えるか

これら三原則を厳格に守ろうとすると、驚くほど「話すネタ」がなくなります。自虐ネタは卑屈な印象を与えてしまいますし、仕事の議論は飲み会の場を硬くさせます。また、家族やお金の話はプライベートに踏み込みすぎる懸念があります。

ここで行き着いた結論が、「話すよりも聞くことに徹する」というスタンスです。

中身のない当たり障りのない会話に充実感を感じられないのは、私たちが常に「生産的でありたい」と願っているからかもしれません。しかし、コミュニケーションを「投資」として捉え直すと、見え方が変わります。

• 若手の価値観は「一次情報」である:彼らが何に悩み、何に熱狂しているかを聞き出すことは、投資家としてマーケットの地殻変動を感じ取るための貴重なリサーチになります。

• 「沈黙」は相手への投資(余白)である:自分が黙ることで生まれる「余白」が、相手が本音を話し出すためのスペースになります。

結論:沈黙は金、説教しないのはダイヤモンド

もし何かを話す必要があると感じたら、自分や相手の「内側」ではなく、最新のニュースや技術動想、美味しいお店といった「共通の第三の話題(外側の話題)」をフックにします。これにより、自分語りを避けつつ、知的な刺激を共有することが可能になります。

完璧な聖人君子を目指す必要はありません。ただ、相手の時間を尊重し、その存在を面白がる。そんな「聞くプロ」としての振る舞いこそが、世代を超えた信頼関係を築く鍵になると信じています。

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