株式投資は”動かない”ほど勝てる理由|サラリーマンに有利な長期投資の真実

仕事が終わってスマホを開き、株価が下がっているのを見て「何かしなければ」と焦る——そんな経験はないだろうか。私にはある。そしてそのたびに、余計な売買をして後悔してきた。

株式市場には、日常の常識が通用しない法則がある。努力すればするほど、つまり売買を繰り返せば繰り返すほど、リターンが下がるという逆説だ。

データが示す不都合な真実

行動ファイナンスの研究者Barber & Odeanは、大手証券会社の約3万5千世帯の取引データを分析した。その結果は明快で、売買頻度の高い投資家は、そうでない投資家と比べて年間リターンが約2.65ポイント低かった。さらに最も活発に売買したグループ(年間回転率258%超)は、コスト控除後のリターンが年間マイナス10.4%という結果だった。

「頑張っている投資家」が最も損をしていた、ということだ。

なぜ動くと損をするのか

理由は2つある。

一つは摩擦コストだ。手数料・スプレッド・税金は、売買のたびに確実に発生する。市場のリターンが不確実である一方、このコストだけは確実に資産を削り取る。ウォール街には「ポートフォリオは石鹸と同じで、触るほど小さくなる」という格言があるが、これは比喩ではなく数字で証明された事実だ。

もう一つは行動バイアスだ。人間には「何もしないこと」に苦痛を感じ、コントロールしようとして動きたくなる本能がある。しかし相場が急落している恐怖の中や、急騰している熱狂の中でとる行動は、統計的に見てほぼ「最悪のタイミング」となる。

会社員は構造的に有利だ

逆説的だが、忙しい会社員は個人投資家として有利な立場にある。仕事中は株価を見られない。日中に衝動的な売買ができない。結果として「何もしない」を強制される時間が長い。

専業トレーダーが1日中画面に張り付いて売買を繰り返す一方、会社員は週5日その誘惑から遠ざかっている。これは制約ではなく、強みだ。私の場合、会社のルールで反対売買は半年間規制されるため、最初から最低半年以上を想定した売買となる。

「退屈に耐える規律」が最大の武器

投資における本当の努力は、毎日チェックすることでも、ニュースに即座に反応することでもない。感情を抑えて、決めたルールを守り続け、退屈な時間に耐える規律を持つことだ。

何もしないことが、最も高度で、最も利益を生む「努力」である。

上部へスクロール