「地方創生」や「人口減少対策」。
この言葉を聞いて久しいですが、実態として現場で何が起きているか、みなさんはご存知でしょうか。
国が各市町村に対し「人口を増やすための施策」を事実上丸投げした結果、全国で起きているのは、「自治体間による札束の殴り合い」です。
今日は、この構造的な欠陥と、その先に待っている残酷な未来について整理してみたいと思います。
1. 既存住民の税金で、他所の人を買う矛盾
いま、多くの自治体がこぞって「移住支援金」や「定住促進奨励金」といった予算を組んでいます。
「うちに引っ越してきてくれたら〇〇万円あげます」「家を建てたら〇〇万円補助します」というあれです。
これ、冷静に考えるとすごいことが起きています。
これまでその土地に住み続け、コツコツと税金を納めてきた既存住民のお金を使って、隣の市町村から人を「カネ」で引っ張ってきているわけです。
既存の住民からすれば、「なぜ自分たちの税金で、外から来たばかりの人を優遇するのか?」という不満が出るのも当然の話です。
2. 「社会移動」は起きても「出生増」には繋がらない
それでも、結果として日本全体の人口が増えるなら意味はあるかもしれません。しかし、現実はそう甘くありません。
A市の人口が増えた時、その裏では必ずB市の人口が減っています。
これは単なる「パイの奪い合い(ゼロサム・ゲーム)」であって、国全体で見ればプラスマイナスはゼロ。
移住支援金をもらったからといって、将来への不安が消え、子供をもう一人産もうという決断に直結するわけではありません。つまり、一定の「社会移動(引っ越し)」は起きていますが、本質的な課題である「出生数の増加(自然増)」にはほとんど結びついていないのです。
3. 「殴られるばかり」の弱小自治体の末路
この「札束の殴り合い」において、勝者は誰でしょうか?
それは、豊かな財源を持つ都市部や、企業城下町などの体力がある自治体です。
一方で、財源に乏しい地方の小規模自治体はどうなるか。彼らは「殴り返すための札束」を持っていません。
より高額な補助金や、より充実したインフラを提示できる豊かな自治体に、現役世代を吸い上げられ続けることになります。
「財源がない自治体は、ただ殴られるばかり」
これが今の地方創生の現場で起きている、残酷な淘汰の現実です。
4. 合成の誤謬から抜け出すために
経済学には「合成の誤謬(ごびゅう)」という言葉があります。
個々が合理的だと思って行った行動が、全体としては悪い結果を招くことを指します。
各自治体が「自分の町だけ生き残ろう」と必死に予算を使い、隣町と消耗戦を繰り広げる現状は、まさにこの合成の誤謬です。国全体で見れば、税金を使い果たして疲弊しているだけと言わざるを得ません。
自治体ごとの「部分最適」を追求するだけの競争は、もう限界に来ています。
そろそろ私たちは、「隣町から人を奪う」ことではなく、日本全体としてどう社会システムを維持していくかという「全体最適」の視点に立ち返るべきではないでしょうか。