経済危機が発生するたび、政府は「国民の生活を守る」という大義名分で大規模な財政出動を行います。しかし現実は、庶民の生活が楽になるどころか、株価や不動産価格の上昇によって「資産格差」が拡大する結果に終わることが少なくありません。
なぜ、弱者を救うためのお金が、結果として富める者をさらに富ませるのか。そこには、資本主義の構造的な欠陥が隠れています。
1. お金の流れる「順番」が決める勝者
この現象を読み解く鍵は、18世紀の経済学者リチャード・カンティロンが提唱した「カンティロン効果」にあります。これは、新しく供給されたマネーは均等に行き渡るのではなく、「最初にお金を手にする者が最も得をする」という理論です。
政府や中央銀行が供給したマネーは、まず銀行や大企業、そして投資家の手元に届きます。この段階ではまだ物価は上がっておらず、彼らは「価値が高い状態のお金」で割安な資産を買い付けることができます。 一方で、そのお金が巡り巡って一般の給与所得者に届く頃には、すでに資産価格や物価は上昇しています。最後にマネーを受け取る層は、実質的に「価値が目減りしたお金」を掴まされることになり、購買力は相対的に低下してしまうのです。まさに、コロナ禍で行われた定額給付金や現在行われている物価高騰対策給付金によって引きこされる現象がそれにあたります。
2. 「K字型回復」が示す実体経済との乖離
近年の危機対応で見られたのは、経済が「K」の字のように二極化する現象です。 政府の補助金や給付金は、失業を防ぐ「底支え」としては機能しましたが、それはあくまでマイナスをゼロにするための延命に過ぎません。
一方で、溢れ出した膨大な余剰資金は、一気に株式や不動産といった資産市場へ流れ込みました。実体経済が停滞している傍らで、資産価格だけが過去最高値を更新し続ける。この乖離こそが、救済策が「所得」ではなく「資産」の価値をブーストさせてしまった結果です。資産を持つ層は寝ている間に富が増え、持たない層はインフレによる生活コスト増に苦しむという構図が固定化されました。
3. 貨幣の減価から身を守るために
国家が危機を救うために通貨を増刷し続ける限り、通貨一単位あたりの価値は薄まり、相対的に「現物資産」の価値が上がっていきます。これは資本主義における一種の「仕様」です。東京のマンション値上がりやビットコイン、金の高騰もそういった現象のひとつです。地方で資産運用などと無縁に暮らす人にとってはたまったものではないでしょう。
おそらく今後も政府によるバラマキのトレンドが変わることはありません。何故なら、国民が選挙のたびに給付や減税を支持するからです。これは仕方のないことだと思います。しかし結果として、自分の首を絞めているのは国民自身の選択なのです。
私たちが取れる自衛策は、この不条理を嘆くことではなく、貨幣の減価から身を守るために「質の高い資産」を保有する側に回ることです。「救済」が「格差」を生むというパラドックスを前提に、自身の資産形成を再定義する必要があります。

